売るまえに読む / 相続放棄と空き家
相続放棄すれば、実家から自由になりますか。
放棄しても、家は消えません。占有していた人には保存義務が残り、国庫帰属は建物があると使えません。放棄・国庫帰属・寄付・買取の4つを費用・期間・責任で並べました。
- 放棄の期限は相続を知ってから3か月。期間の伸長も申し立てられる
- 占有していた人は、放棄しても引き渡すまで保存義務が続く
- 国庫帰属は建物があると使えない。解体費と負担金が先に出る
売るまえに読む / 相続放棄と空き家
放棄しても、家は消えません。占有していた人には保存義務が残り、国庫帰属は建物があると使えません。放棄・国庫帰属・寄付・買取の4つを費用・期間・責任で並べました。

放棄すると、はじめから相続人でなかったことになります。ただし家そのものは消えません。誰かが管理し、誰かが処分するまで、そこに建ち続けます。
相続放棄(財産も借金も一切受け取らないと、家庭裁判所に届け出ること)は、家庭裁判所に申述(家庭裁判所への申し出)して認められれば、借金も不動産も引き継がずに済む制度です。実家に価値がないと思えば、放棄して縁を切りたくなるのは自然なことです。ただ、放棄のあとの家がどうなるかまで説明されることは少なく、ここに誤解があります。
2023年4月1日に施行された改正民法940条は、こう定めています。「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産の清算人に対してその財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」つまり、相続を放棄した人でも、放棄したときに実家を実際に使ったり管理したりしていた人には、義務が残ります。家を次の人(ほかの相続人か、裁判所が選ぶ「清算人」)に渡すまで、自分の家と同じくらい気をつけて守らなければなりません。改正前は「管理を続けなければならない」という条文で、誰がいつまで責任を負うのかがあいまいでした。改正で範囲がはっきりした、というのが法務省の説明です。
読み方は二つです。ひとつは、占有していなかった人は放棄すれば義務を負わないということ。県外に住んでいて、実家に何年も帰らず、鍵も管理もしていない相続人は、放棄で家から離れられるのが原則です。もうひとつは、実家に住んでいた人、鍵を持って出入りし、草刈りや雪下ろしを手配していた人は、放棄しても引き渡すまで保存義務が続くということです。境目は一件ごとに違うので、司法書士(登記の手続きを代わりに行う専門家)か弁護士に確かめてください。
保存義務は、家を滅失させたり傷めたりしないように保つ義務で、修理して価値を上げる義務ではありません。それでも、北陸の家は雪が載ります。「放棄したから知らない」で済まない冬が、保存義務のある人には毎年来ます。
保存義務が続く間に何をするか(雪下ろし・水抜き・草刈りの頼み先)は、県外から富山の空き家を管理する年間カレンダーに書きました。

相続放棄の申述は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に出します。申述書には800円分の収入印紙と連絡用の郵便切手を添え、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本などを付けます(裁判所の案内による)。
3か月は、四十九日を終えて、家の中を見て、兄弟と話して、と動いているとすぐに過ぎます。財産の全体像がつかめない場合は、同じ3か月以内に相続の承認または放棄の期間の伸長を家庭裁判所に申し立てる制度があります。期限を過ぎると単純承認(相続をそのまま受け入れること)したものとみなされ、原則として放棄はできなくなるので、迷っている方はまず伸長の申立てを司法書士に相談してください。
その3か月の間に、費用をかけずに分かることがあります。その家に、いくらの値が付くかです。当社の査定(いくらで買い取れるか値段を出すこと)と現地調査は無料で、家財が残ったまま、相続登記(亡くなった方から名義を移す手続き)が済んでいなくても行えます。判断材料に「売れる家か、売れない家か」が入っているかが、あとで後悔するかどうかの分かれ目です。
兄弟全員が放棄し、次の順位の親戚も放棄すると、その家は相続人のいない財産になります。国が自動的に引き取るわけではありません。誰かが家庭裁判所に申し立てて相続財産清算人(2023年4月の改正前は相続財産管理人と呼ばれていました)を選んでもらい、清算人が家を管理し、売却や処分を進め、最後に残ったものが国庫に帰属します。
申し立てられるのは、債権者などの利害関係人と検察官です。保存義務が続いている放棄者が、義務から離れるために申し立てることもあります。申立てには予納金が必要です。予納金は、申し立てた人が先に納めるお金です。清算人への報酬や実際にかかる費用を、亡くなった方の財産で払いきれないときに備えたものです。金額は、家庭裁判所が一件ごとに決めます。現金のほとんどない空き家の案件では数十万円単位になることが珍しくなく、財産から費用が出なければ戻りません。額は申し立てる家庭裁判所にお確かめください。
選任されると、官報で清算人の選任と相続人捜索の公告が出ます。この公告期間は6か月以上で、債権者への請求申出の公告も同時に行われます。この間、家は空き家のままです。清算人が家を売ろうとしても、買い手が付かなければ処分は進みません。
売れる家なら、放棄の前に相続して売るほうが早く、手元に残るお金も生まれます。
「いらない土地は国に返せる制度ができた」と聞いた方も多いと思います。相続土地国庫帰属制度です。2023年4月27日に始まり、相続や、相続人への遺贈で土地を取得した人が、法務局に申請して承認を受ければ、その土地を国に引き取ってもらえます。ただし、実家を持て余している方にとって決定的な条件があります。
建物がある土地は、引き取ってもらえません。法務省が示す「引き取ることができない土地」の最初の項目が、建物の存する土地です。境界が明らかでない土地や、管理に過分な費用や労力がかかる土地も対象外です。実家の土地を国に返すには、先に建物を自費で解体し、更地(建物を壊した、何もない土地)にしてから申請することになります。
解体費は、解体費用の相場にまとめたとおり、富山の木造住宅で坪3〜5万円前後、延床40坪の家で約150〜200万円からが目安です。蔵や納屋、屋敷林(家のまわりの風よけの林)まで含む農家住宅では、総額300万円を超えることが珍しくありません。しかも更地にすると、翌年から固定資産税の住宅用地特例(家が建っている土地の固定資産税を安くする仕組み)が外れ、土地の税額が上がります。申請には土地一筆あたり14,000円の審査手数料がかかり、承認されると負担金を納めます。負担金は原則20万円で、市街化区域の宅地や農地、森林などは面積に応じて変わります。審査手数料は、却下や不承認になっても戻りません。
まとめると、国庫帰属は「解体費を払い、税金が上がるのを受け入れ、手数料と負担金を納めて、土地を国に渡す」道です。富山では富山地方法務局が申請と事前相談の窓口で、申請前の相談は予約制です。数字は執筆時点のもので、最新の額は法務省の案内と富山地方法務局の案内でお確かめください。
なお、農地や山林が付いた実家では、母屋の敷地は売り、使い道のない山林だけを国庫帰属に、という組み合わせもあり得ます。農地と山林の出口(売る・貸す・持ち続けるなど、最後にどうするか)は田んぼ・山林付きの実家の売り方に分けて書きました。
実家を手放す道は、放棄だけではありません。4つを同じ物差しで並べます。つまり、手放し方を、お金を受け取る方法と払う方法に分けて比べます。物差しは費用、期間、手間、そして残る責任です。
放棄と国庫帰属は、買い手が付かない土地には有効な道です。ただ、買い手が付く家に使うと、受け取れたはずのお金を払って手放すことになります。順番は、まず売れるかどうかを確かめる。売れないと分かってから、放棄や国庫帰属を考える。それで3か月の期限に間に合います。


当社が古民家を直した事例です。古びた和室でも、柱と梁の骨組みが生きていれば、次の使い手に渡せます。天井を抜いて梁を見せた階段室にし、民泊(家を旅行者に泊める宿)として開業しました。工期4か月、建築工事費900万円。→ この事例を詳しく見る
「価値がない」と思われている実家の多くは、仲介で売りにくい家であって、売れない家ではありません。仲介(不動産会社が買い手を探して売る方法)は買い手が住むことを前提にするので、家財や雨漏りや親名義の登記(土地や家の持ち主を記す国の記録)で話が止まります。当社は自社が買主になる直接買取なので、前提が違います。次の状態でも、今のままご相談いただけます。
買取価格は、仲介で売れた場合より低くなります。修理費、売れ残るおそれ、片づけの手間を、買主である当社が引き受けるからです。その代わり解体を前提にしないので、買値から解体費を引きません。買い取った家は解体せず、直して次の住み手に引き渡す方針です。放棄や国庫帰属を選べば家は壊されるか放っておかれるかですが、売る道なら家は残ります。
よくいただく質問が二つあります。「弟は要らないと言うが、自分は相続して売りたい」と、「放棄するつもりだが、実家の片づけだけ先にしていいか」です。
一人だけ放棄することはできます。放棄は相続人ごとに、それぞれが家庭裁判所に申述します。弟さんが放棄すれば、残った相続人で遺産分割をして、家を相続した人が売ることになります。ただし、放棄した人は家だけでなく、預金などほかの財産も一切受け取れません。「家は要らないが預金は分けたい」なら、放棄ではなく、遺産分割協議(相続人全員で、誰が何を受け取るか決める話し合い)で家を相続しない形にします。この違いは大きいので、決める前に司法書士に確かめてください。
片づけは、放棄の前にはしないでください。相続財産を「処分」すると単純承認したものとみなされ、放棄ができなくなります(民法921条)。家財を売る、処分業者に出す、預金を引き出して使う、といった行為が典型です。一方で、家や物を傷めないように守ることは「処分」になりません。値打ちの低い形見を分けることも、ふつうは問題ないとされています。ただ、どこまでが保存でどこからが処分かは個別の判断で、当社が線を引くことはできません。放棄を考えている間は家財に手をつけず、先に司法書士に相談する。これが安全な順番です。当社の査定は家財が残ったままで行えるので、片づけてから見せる必要はありません。→ 片づける前に止まってほしいこと(貴重品・建具・仏壇)

放棄するか、相続して売るか。判断に要るのは、法律の見立てと、家の値段の二つです。順番はこうです。
3か月の期限の中で、この三つは十分に収まります。本当に売れない家であれば、そう正直にお伝えします。
放棄のときに実家を「現に占有」していなければ、保存義務は負いません。県外に住んでいて実家を使っていない相続人は、放棄で管理から離れられるのが原則です。一方、実家に住んでいた方や、鍵を持って管理していた方は、次の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が続きます。どちらに当たるかは司法書士や弁護士に確かめてください。
相続の開始を知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述します。財産の調査が終わらない場合は、同じ3か月以内に期間の伸長を申し立てられます。期限を過ぎると単純承認したものとみなされ、原則として放棄はできません。
できません。建物がある土地は、法務省が示す「引き取ることができない土地」に当たります。先に建物を解体して更地にする必要があり、富山の木造住宅の解体費は坪3〜5万円前後が目安です。承認されれば負担金(原則20万円)も納めます。詳細は法務省と富山地方法務局の案内でお確かめください。
誰も相続しない家は、利害関係人や検察官の申立てで家庭裁判所が相続財産清算人を選び、清算人が管理と処分を進めます。申立てには家庭裁判所が決める予納金が必要で、公告には6か月以上かかります。売れる家なら、放棄の前に今のまま売るほうが早く、予納金のような自分で払う分もありません。
相続財産を「処分」すると単純承認したものとみなされ、放棄ができなくなります(民法921条)。家や物を傷めないように守ることは「処分」になりません。値打ちの低い形見を分けることも、ふつうは問題ないとされています。ただし、どこまでが良いかは、その都度の判断になります。放棄を考えている間は家財に手をつけず、先に司法書士に相談してください。当社の査定は家財が残ったままで行えます。
家庭裁判所で放棄が認められると、その人ははじめから相続人でなかったことになります。家の持ち主にならず、亡くなった方の納税の義務も引き継ぎません。ただし、放棄のときに家を実際に使ったり管理したりしていた人には、次の人に引き渡すまで家を守る義務が残ります。くわしくは相続した空き家の固定資産税をご覧ください。
本ページは一般的な制度の解説です。放棄のできるかどうか、保存義務のあるかないか、単純承認に当たるかどうかは個別の事情で変わります。最終的な判断は司法書士・弁護士にお確かめください。制度の内容と金額は2026年9月時点のもので、法務省・裁判所の公式案内のほうが正しいとお考えください。
家の写真と場所だけで構いません。家財が残ったまま、登記前でも、県外からでも。査定は無料で、断っても費用はかかりません。
登記、税金、控除、期限。相続した家を売るまでの順番と、壊す前に知っておくことをまとめています。